高校11期会

★牧陵会事務局からのお願い

 住所が判明している方には、「牧陵新聞」等の牧陵会活動報告や、同期の幹事の方から同期会開催等のご案内状をお送りします。

 牧陵会では、牧陵会活動への温かいご理解と、活動への積極的な参加をいただくため、宛先不明となっている会員の方々の現住所を確認する作業を進めております。
 このリストをご覧になられたご本人から、あるいは、同期生の現住所をご存知の方は、移転先住所等の下記変更事項を牧陵会事務局までご連絡いただければ幸いです。

《ご連絡いただきたい事項》
 【卒業期】・【氏名(旧姓も)】・【住所】・【電話番号】・【メールアドレス】等
 ※ 卒業期は、「緑高同期会」のページの早見表をご参照ください。

 個人情報を一般に公開することはありませんが、同期会開催のために要請があれば、同期会幹事に提供する場合があります。
 同窓会名簿は、インターネット回線に接続していないパソコンで厳重に管理しており、冊子としての名簿は、平成10(1998)年版以降、発行しておりません。

 宛先不明会員の一覧表は、個人情報保護のため、お名前はカッコ内に1字のみ表記させていただきました。

 牧陵会事務局
  〒231-0027 横浜市中区扇町3-8-6
  ℡045-664-9020
  e-mail  bokuryoukai@gmail.com

宛先不明会員リストを見る


✿ 忘れられしものへの挽歌・民話

金剛輝雄

この春、東北大震災で被害を受けた岩手県の各地をめぐる旅をした。一関から電車で気仙沼へ、そこから陸前高田までバスBTRに乗り、当地で一泊。翌日、盛から南リアス線で釜石まで行き、釜石線に乗り換え、遠野で一泊というコース。
津波で残った一本松の陸前高田市は東西南北、数キロにわたる平坦な地形であったため、全域が津波で崩壊。町の復興は道半ばであと4、5年はかかると町役場の職員が云っていたが、大変気の毒なことだと思う。

遠野物語

さて掲題のとおり2日目に宿泊した遠野でのことについて書きとめたい。
遠野は盛岡藩遠野南部氏の城下町であり、大きな敷地に各戸は蔵、土蔵を抱え、今でもみられる古式豊かな町だ。
遠野の民話は民俗学者柳田國男が地元の佐々木喜善から口述した話を聞き取り、まとめて著書にしたのが「遠野物語」。以来遠野は日本民族学の出発点となる。
語られる民話は遠野のような四方が山間に囲まれた地域や豪雪地帯に伝わるものが多く、狐、河童や雉などが人間に扮し、神々や精霊がそこに住む民衆と一体化して、人々の生きる姿を伝承している。
山形県出身の劇作家、井上ひさしは上智大学を休学して当時母親が住んでいた岩手県釜石港町に帰省。近くの国立釜石療養所の事務員として務めた。入所患者の自己負担分の医療費の請求に釜石から2時間ばかり遠野の方角へ出かけて行く機会が多く、そこで同氏が柳田國男の「遠野物語」を下地にして、哄笑とともによみがえらせたのが「新釈遠野物語」だ。
民話は9つから構成されているが興味ある民話をかいつまんであげて見る。
山の堀穴に住む犬伏老人が語る「鍋の中」
老人は若い時、東京のある交響楽団の首席トランペット奏者だった。演奏旅行は行く先々
で大うけで、最後の演奏会場が山の中にある鉱山の講堂だった。宿舎の職員寮に戻り、さあ明日は下山、馬車で遠野へ出て、花巻まで行けば汽車に乗れる。

遠野物語2

と思っていた矢先に「ツマキトク、スグカエレ」という電報が届く。
下宿の娘と結婚したばかりで一週間もいないうちに、演奏旅行に出かけてしまったので、妻が可愛そうになり、鉱山の職員が夜は危険だというのをふりきり、下山を決行する。
途中道に迷い、雪のなかを彷徨すること数時間、ようやく明かりが見えた1軒の家。「雪の中を難渋している者です。軒下でも泊めてくれないか」と頼むと、中から器量のいい痩せぎすの26、7の女が「泊めて差し上げたいのは山々ですが、山に出ている嫉妬深い主人が帰るまでこの縁側でお待ちください」と言う。
女が中に引っ込んだ隙に、土間で大鍋の中で煮えている蓋を開けて見ると、赤ん坊が紫色に煮えていた。戻ってきた女は手に鉈をぶら下げ振り落した。一本の太い薪が土間で2つになった。
女はそれは赤ん坊ではなく猿の赤ん坊だという。「皮を剥いで食べるとおいしい。また内臓の肝は肺病によく効く」と。こんなくだりの民話であるが、もちろん女の正体は狐。
もう一つ。「川上の家」
考太郎と少年は仲良しだった。彼は川遊びや走りは人一倍早く、人気ものだったが、少年は川上の人里離れた彼の家を一度も尋ねたことがなく、ある時行きたいと考太郎に頼む。彼はいやいや川上の一軒家に案内してくれたが、家にはやつれた母親が長患いで横になっていた。手と手の間には水かきがあり、キモが食べたいと、譫言を呟く。数日して川で少年の弟が突然、溺れ死んだ。遺体の尻からは内臓のキモが引き抜かれ無残な姿で発見された。ところが悲しみとは裏腹に金脈を探していた少年の父が大きな金鉱を発見、大金が家に転がりこんできた。実は考太郎は河童だった。この他人間と馬が情死するという奇怪な民話もある。
私が終戦直後に疎開した母方の村、石川県能都町柳田は林業と農業で生計を立てる寒村であるが、そこにも同じような民話が伝承されていて、爺さんが夕食後、囲炉裏を囲んで私達に話してくれた民話のことを覚えている。
実家は田園を見渡し、向かいの山が見えるところにある。夜、その山の中腹に無数の提灯が横一線にズラット並び、怪火を灯すことがある。これを狐の嫁入りと呼んでいるが実際に私は見た覚えがある。
また隣のおじょこ(娘さん)が狐に化かされて一晩、田んぼの肥桶に浸かっていたとか。奇怪な話が現実に語られていた。   あたりは森林が立てこもり、街道沿いに流れる川はゴーと不気味な音をたてている。人気のない合鹿(ごうろく)街道に、夜半、大男が仁王立ちなって人間に襲ってくるという民話もある。河童が人を化かすのだ。
このように地域の集落によってさまざまな民話があるが、これらは民衆の生活の中から生まれ、民衆によって口承されてきている。
                                【バイカル湖】

遠野物語3

3年前モンゴールとシベリアのイルクーツク、バイカル湖を旅した。広大な大自然に驚嘆するばかりだったが、人々は色とりどりの布を木片に巻き付け草原に、湖上の淵に、路上の側近に立て、天に向かって祈る姿を見た。電気もなく、ガスもない生活。動植物はもちろん石屑に至るまですべて精霊が宿り、人間は万物と共存していると信じるいわゆるシャーマニズム思想。国籍を問わずここにもまた民話は存在しているのだろう。
そして民話は世界や日本の地域で伝承されていくものと思うが、ともすると科学万能な現代では一笑にふされてしまいがちだ。
しかし、自然や動物と人間が共存した時代の民話には厳しさと同時に暖かさも伝わってきて、あらためて民話の大切さを痛感した。
                          

掲載日 平成30年5月18日
記事作成者 金剛輝雄(高校11期)
掲載責任者 深海なるみ




✿ ジョン・ルカレ・スパイ達の遺産

稲森 一彦
その作家の全作品を読めと言ったのは小林秀雄とか?私の場合英国の作家ではジョン ルカレがその一人です。
 本名デヴィッド コーンウェルは1931年英国に生まれ不幸な幼少期(父親は洗練されてはいるがその実詐欺師であり、母親はそれを嫌い子供たちを捨てて出奔してしまう)をすごすが、苦労してパブリックスクール、オックスフォード大学(ドイツ文学専攻)卒業する。その後、名門イートン校の教師を経て1958年諜報機関MI5に入りスパイとして働き3年後外務省管轄下のMI6に転籍し1961年当時の西ドイツ首都ボンの大使館の商業―文化担当書記官赴任する。
 当時の英国は、(今のEUの前身)EECに加盟することを国是としていたが、ドゴールのフランスの猛反対に会い、已む無く復興中の西ドイツを取り込み其賛同を得て加盟を果たす事が西ヨーロッパ外交中心であった。(実際に加盟実現は1972年)。ルカレは其先兵として、スパイ活動の傍ら西ドイツの輸出振興の為に物産展をひろく英国に展開したり、英国民主主義議会政治をドイツの若手政治家、官僚、実業家に幅広く紹介(教育)するなど英独を行き来し精力的に働いた。
 1963年それまで密かに書き溜めていた小説の一つ“寒い国から帰ってきたスパイ”を発表する。

画像の説明

その筋立ては、東独秘密警察スタージの高官を英国のスパイとして取り込んでいるがその身元を怪しまれそれを阻止すべく新たにスパイを送り込むというもの。これは今までのスパイ物(例えばケネディー大統領が愛した同じMI6出身のイアン フレミングの007シリーズ7作)とは桁違いの現実感、複雑な筋立て、登場人物の深い性格描写そして何よりもほろ苦い人生そのもの感じさせる読後感で世界的ベストセラーとなり、翌年外務省退職、専業作家となる。
 この小説の成功のウラには、実際にMI6の高官キム フィルビーが実はソ連のスパイであったことが発覚した事件が存在している。これがこの作品および次の連作(主人公の名からスマイリー物と呼ばれる。)の伏線というか通奏低音となっており、“誰かわからないが上に裏切り者がいるから、それに知られないように”という異常な緊迫感を生み出している。また連作を通じてあきらかになってくる主人公ジョージ スマイリーの苦渋に満ちた人生にも拘らずスパイという“汚い”仕事に献身するその姿が多くの共感よんでいる
 その後は2~3年に一冊、その時々の最もセンシティブなテーマ、イスラムテロと中東、ソ連邦崩壊にともない変質するロシア、コーカサスイスラムのテロリスト、種族紛争と武器商人エイズとうの疾病で搾取されるアフリカ大陸などを舞台にキーンな作品群が並ぶ。
2010年には、22冊目の“繊細な真実”を出版する。これは外務省(MI6)が自国の軍隊組織に頼らず、アメリカの民間軍事会社を起用して国民に知られたくない(汚い)作戦実行しそれに破綻した事件を若い外務官僚とその恋人が暴くという筋書き。若い世代の英国人に
大きな期待をかける様な作品であり、これがルカレ最後の作品と思われた。

ところが昨2017年暮れ突如として“スパイ達の遺産”が発表された。これは第一作”寒い国から“の54年後の続編です。筋立てとしては前段に、まずスタージにどうして逆スパイを送り込めたかを説明する為に瑞々しいロマンに溢れた物語を設える。しかし後段では前作の犠牲者には実は子供たちがいて、彼らが東西統一後のドイツで発表された東独の公文書を基に英国外務省相手取り損害賠償の裁判をおこす。引退したスパイは、ともすれば
個人に責任をおっ被せてスキャンダルから逃れたい後輩官僚相手に身の潔白を証明する証拠を出さなければならない。漸くドイツ フライブルクに隠遁して学究生活を送るスマイリーを訪ねあて、問題解決に至るのだが、最後に彼が言うには、“すべてはイギリスの為にやったかって?時代が違うということはあるよ。でも誰のイギリスなの?どのイギリスなの?イギリスは孤立してどこの市民とも言えないじゃないか?私はヨーロッパ人だよ。あの冷戦を戦った使命感があったとすればそれはヨーロッパのためだ。私が無情であったとしてもそれはヨーロッパのためだ。達成できないかもしれない理想を持っていたとすれば、それはヨーロッパを暗闇から理性の新時代に導くことだった。いまでもそうだよ。”
 この部分は感動的であり、英国のEU離脱決定をうけ、このセリフを言わせるの為に86歳のジョン ルカレはこの“白鳥の歌”を書いたと思います。
ブラヴォー!マエストロ。半世紀以上にわたり楽しませて戴き有難う!!

2018・03.21    

P/S 最後のセリフは私流に恣意的に訳したもので翻訳本と違っていてもご容赦請う
また“地下道の鳩”などの創作品ではないものは、合計23冊の中には含めなかった。

記事掲載日 平成30年3月24日
記事作成者 稲森一彦(高11期)
掲載責任者 深海なるみ




✿トールペイントフエキ作品展のご案内

作品展
                          

アメリカントールペイントの作品を展示します。
絵画とは違い、アクリル絵具や油絵の具、水彩絵の具を使用して塗り絵のように仕上げていく、どなたでも簡単に描けるホビーです。                      【笛木ひろみ】
会 期 2017年11/22-25
会 場 横浜山手ブラフ18番館
入場無料          

             ---------------------------------

※先日、お集りの会で、高校11期の青木和子先生にお目にかかりました。色々なことをなさっていらっしゃって、いつも元気を頂きます。お話の中で、11月に作品展があるという事でした。牧陵会のHPにご案内を掲載致しますから、記事を送って下さいとお願いしました。
主催者の笛木ひろみさんからポストカードとご案内を頂きましたので、お知らせいたします。                 【深海なるみ(高校15期)】

記事掲載日 平成29年10月29日
情報提供者 青木和子(高11期)
掲載責任者 深海なるみ